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中規模パン工場でバイトをしていた時のお話し。

働き始めるまで

人材派遣会社に登録し、紹介された仕事の中から選びました。
パン工場を選んだ理由は、「人と余り話す必要が無さそうだなあ。」と憶測したこと、そして時給が割りと良かったこと。
今にして思えば、人とコミュニケーションをとる局面は毎日何度も発生しましたし、時給もアノ疲労感を考慮すればむしろ割安でした。

初日、派遣会社の担当者同伴の下、パン工場へ出向きました。
そこで総務部長と面会。
一通りの挨拶を済ませた派遣会社担当はそこで帰りました。

まず、仕事内容に関することや給与などについて総務部長から説明を受けました。
私一人でなく、60代くらいのおじさんも隣で一緒に。
常態的に人手が足りていないようで、よほど異常な人でない限り、希望者はほとんど誰でも採用される雰囲気でした。

「4年制大学を卒業した人は一般的には正社員採用の会社に就職するのが通例ですけど、ここでの長期就労は本当に大丈夫ですかね。」
「はい、しばらくは勤めるつもりです。」
(※結局、2ヵ月後に別会社に就職し辞めた。)

説明の後、本当に勤務するかどうかを決める判断材料として、工場内の見学がありました。
工場は365日24時間、設備メンテナンスの時間を除いてずっと稼動しており、見学の時もそうでした。

見学前、これを着るようにと渡された白い作業服には、誰かの名前が書かれていました。
名前は繰り返されたであろう洗濯によって、ほぼ消えかかっていました。
仕事を辞めた人が着ていた服です。
辞めていった誰かの御下がりは、就労して間もない人や、スポット派遣で来る人が着ることになっていました。

着慣れない作業服を着てマスクをした私。
鏡に映る自分の姿を見て、「労働者だなあ」と思う。
そして、同じような格好に身を包み、雰囲気がまるで変わった総務部長に連れられ、いよいよ工場内に入っていくことになりました。

工場見学

食品を扱う現場で何よりも大事なのが、衛生であること。
だから製造現場に入る前には必ず、作業者を清潔にする場所を通ることになります。
まずは、強風によるゴミの除去。
3,4人ほどが入る小部屋の中で、扉が閉まると同時に放たれる風に身を晒します。
次に、粘着ローラーによるゴミの除去。
どういう順番で体にローラーをかけるのか、それを指南する張り紙もあります。
次は基本の手洗い。
タイマーを使って時間を計測し、必ず一定時間洗います。
そして、服にゴミが着いていないか、爪が伸びていないか、爆弾を持ち込んでいないかなどを担当の人に確認してもらいます。
やっと最後、見た目はどう見ても水なのだが水ではない、殺菌性のある液体で手を洗い、ゴム手袋をして完了です。
世界で誰よりも綺麗になりました。

重たい扉が開かれる。
まず気になったのは、色々な機械音。
ずっと鳴り響いていた。
そして加工ラインに案内される。
同じ服装に身を包んだ人がベルトコンベアを挟んで並んで作業している。
次に仕分け室。
配送先ごとにパンを振り分けている。

結局この日は20分程度見学して終了した。

初日

初日、仕事上の注意事項やマナー、就労規約などの音読をさせられ、午後から現場に。
衛生エリアを抜け、加工ラインへ。
私は加工ラインに配属されました。
初日にやった作業は、焼きたてのパンをばんじゅうに詰め、そのばんじゅうを積み重ねること。
大事なのは、きつきつに詰めすぎないこと、そしてばんじゅうは交互逆に積み重ねること。
そうしないとパンがつぶれてしまうのです。
初日はこれだけで終了しました。

働く人々

男性よりも女性の方が多かった印象です。
4:6くらい。
年齢層は30~60過ぎくらいが大半。
外国人もたくさんいました。
パン作りの研修で来ているフィリピン人の女性たち。
コーンを乗せたりソースを塗ったりすることがパン作りの勉強になるのかは疑問ですが。
あと、日系ブラジル人の人たちなど。

もちろん正社員もいます。
現場に出てくる正社員は全員男性でした。

あとたまに出てくるのが工場長。

辛かったこと

メモが取れない

メガネ以外の私物は持ち込み不可なので、メモは取れません。
仕事のやり方は直接覚えるしかないです。
一回で全部覚えるのは無理ゲー。

高圧的な正社員たち

いかにも出来なさそうな人がいて、パンを焼きすぎて駄目にするミスをしてしまいました。
それで一人の正社員はぶち切れて
「どうやったらちゃんとできるんですか?自分バカなんで教えてください!」
みたいなことを大声で言っていたような。
自分もミスは何度かしましたが、ここまで怒鳴られはしませんでした。
いずれにせよ、ラインの人たちと正社員の関係はあまり良好では無かったです。

拘束時間が長い

工場は24時間365日稼動しています。
昼夜交代制なので、拘束時間は12時間。
場合によっては残業をすることも。
終わると結構くたくたになります。
でも数時間寝たらまた働いていることになります。

良かったこと

パン食べ放題

製造されたパンは食べ放題です。
だから最悪昼飯を忘れても大丈夫。
自分はパンとカップラーメンを食べてました。
不健康ですが。

覚えたら楽

工場での作業なので、そこまで変則的な作業は無いです。
覚えることができたら、後は楽ですね。
でも、後でも言いますが、培炉出しだけは慣れませんでした。
次の日が培炉出し担当だと憂鬱でした。

身体が締まる

工事現場での肉体労働ほどの疲労はなく、ちょうど良い感じで身体が締まります。
一番筋肉を使う仕事は鉄板を運ぶ作業ですが、それでも台車を使うのでそこまできつくはないです。

作業内容だけ知りたいならココを読んでください

作業とその詳細

 培炉出し  発酵したパンが100個以上乗った台車を、程よきタイミングで培炉から取り出し、ラインに流す。機を逸すると過発酵になり、パンが無駄になる。しかし安心してほしい。タイミングを記した紙があるんだ。とはいえ、慣れない内は混乱すること請け合い。培炉はいくつも存在し、同時並行に複数種類のパンをベストタイミングで取り出す必要がある。パンの名前もアルファベット3文字で表記されていて、覚えるのが大変。かくいう私もメロンパンを十数個ダメにした。メロンパンの表記はMRP・・・ではない。難易度が高いので、新人研修では最後に覚えさせられる。
 材料仕込み  私が経験したのはコーンのせん別だ。コーンを台にバッと広げ、その中にある不適格なコーンを取り除く。芯の残ったコーンがその代表だ。他の作業としては、ソースの計量や調合があるが、現場での経験年数がないと行えない。
 ライン仕事  工場内での花形と言われる。主にトッピングやカッティングを行う。”ソーセージの向き”を意識したのは人生で初めてのことだった。パンは次々に流れてくるので、少しでも気を緩めたり、手元が狂ったりすると、パンは手の届かない遥か遠くへ。そんな時は誰かが助けてくれたりもする。助け合いの精神が試される。ただし、一人で請け負う場合もあるので、その時はミスったパンも笑顔で送り出せ。
 鉄板運び  焼成で使い終わった鉄板はどこへいくのだろう。そう、彼らが元の場所に  戻してくれているのだ。彼らのおかげで工場は動き続ける。200kg以上に も及ぶ鉄板を5時間近く台車で運び続ける。作業中、指を切断した者もい るという。そんな過酷な状況にある彼らに追い討ちをかけるかのように、他の作業員への定期的な粘着クリーナー掛けや使い終わった容器の洗浄といった雑務が課せられている。そこにこの世の不条理を見た。
 清掃  夜勤と昼金に分かれており、その交代の際に全員で行われる。ラインや床は汚れまくっている。いくら綺麗に掃除しても、12時間後には元通りに汚れるのだ。「掃除が嫌なら、パンを作らなければいいじゃない。」マリー・アントワネットならそう言うだろう。そして鉄板に乗せられラインに送られ、こんがり焼かれるに違いない。
 その他 配送先への仕分け、トンネル型オーブンの制御 など

適正

 向いてそうな人 体力がある、手先が器用、誰とでも話せる
 向かなそうな人  人一倍暑いのが苦手、ずっと立つのが無理、延々と同じ繰り返しが無理、コミュニケーションに難あり